病気

強い心コレクション

 おととい(2010年1月12日)、5回目となる抗がん剤(カンプト+シスプラチン)の点滴を受けてきた。
嘔吐したり、熱を出したりして体調を崩していたので、やっていただけるか不安だったし、実際「CRP(炎症反応)」というのが高かったらしいのだが、なんとか「GO」(郷ひ○みさん風に発音してね)となった。
お約束で昨日一日(1月13日)ぐったりし、今日になってそろそろと活動開始!
ご心配くださった皆さん、いつも本当にありがとうございます。
先日夕方のニュースに「篠沢教授」が出ていた。
篠沢教授って、若い人はご存じないかも。昔「クイズダービー」というテレビ番組があり、教授は回答者として出演されていたのだが、本当に真面目で学問一筋の方だったらしく、一般人なら「誰でも」知っているような答を間違ったりされるので、そこがとても人気があった。
偉い「教授」なのに、容貌もちょっとテディベアぽくって愛らしい方。
その篠沢教授を久しぶりに拝見したと思ったら、なんと教授は「ALS(筋萎縮性側策硬化症)」(ホーキング博士と同じ病気)にかかっていらした。
筋肉がだんだん衰えていく病気で、教授ももう車椅子とベッドだけの生活で、しかも呼吸が止まってしまうのを避けるため声を捨てて(気管を切開して)人工呼吸器をつけているのだ。
なので筆談でインタビューを受けていらしたのだが、そんな大変な状態なのに、教授の表情はとても穏やか。
以前テレビで見ていたときと変わらない暖かい笑顔の人だった。
話す能力を自ら捨てて人工呼吸器をつけたのは、今本を執筆中で、それをどうしても呼吸が止まる前に書き上げたいからだととのこと。
はたから見れば、「そりゃあ、話すのと死ぬのとどっちを選ぶかって言えば話すほうをあきらめるでしょう?」と当然な選択に思えるかも知れないけれど、果たしてそうだろうか。
教授は、自発呼吸が全くできなくなっていた訳ではない。綱渡りではあっても人工呼吸器をつけるのを先延ばしにして、話す機能を温存する選択もあったかも知れないのに、「本を書き上げる前に呼吸が止まっちゃうといやだから」と決断した。
話せるって、人間にとってすごく大切なことだよね? 自分のやりたいことをまっすぐ見つめて、そのために話す機能をすっぱり捨てるって、私にはなかなか難しいことのように思えるのだがどうだろう。
インタビューの最後に教授がノートに書かれた言葉は「古代の心」。
古代の人は、なんら移動手段を持たず、自分のまわりの人、家畜、自然だけを見て生きて死んでいった。
今の自分はどこへも行けないけれど、その古代の人の心で自分のまわりのものだけをあるがままに受けとめて暮らしていますよ、ということらしい。
教授の表情の落ち着きに嘘や強がりは全くなく、ああ、この人の心は今本当に平安なんだなあとまっすぐに伝わってきた。
なんと強い心の持ち主なんだろう。
私はまだまだ「古代の心」にはとてもなれず、むしろ「移動欲」でじりじりしている段階なんだけれど、この先身体が動かなくなっていくにつれて、この教授の言葉の意味が実感されてくるのかなあと思う。
死の床となったベッドには、思い出と人間関係しか持っていけないと思っていたけれど、自分に感じる心があるなら、その時自分のまわりにあるいろんなものを感じ取ることができる。
動けなくなったから終わりなのではない。
そう思わせてくれた教授のインタビューだった。
教授の心、私の「強い心コレクション」にがっちり入れさせていただきますね!

 

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    少し回復したようで、よかったです。
    篠沢教授覚えています。
    ALSですか・・・。
    夫が似たような病気なので他人ごとではないです。
    私だったらおろおろして、病気の進行よりも先に精神が参ってしまっている事でしょう。
    意識がクリアーなのに体が動かない、というのは残酷です。
    それなのに、自分の目標に向かって真っすぐに生きている・・・
    尊敬します。
    >自分に感じる心があるなら、その時自分のまわりにあるいろ>んなものを感じ取ることができる。
    そうですね、そうありたい、と思います。

  2. より:

    意識がクリアーなのに身体が動かない状態・・・今まさしく、私はその状態に向かって進んでいます。篠沢教授の姿勢から感じるものが多くありました。
    篠沢夫妻も、かえって奥様の方が「まだ信じられない、立ち上がってドアから出てくるような気がする」と、いまだ病気を完全に受け入れることができていないご様子だったのも印象的でした。
    家族の方がつらいのかも知れませんね。

  3. かおる より:

     大脳が侵される病で人格崩壊があるときは、周りの者の悲嘆の方が大きいですが・・・。
    ALSでも、癌でも、本人が一番辛いと思います
    そんな中、強くありたいと頑張ってらっしゃる望さん、素晴らしいです
    私も見習いたい、と思っています。

  4. より:

    いつまで強い心でいられるかかなり不安ですけれど、いつもアンテナを立てて、強い心の持ち主を探して、何か学べないかと画策しています。
    去年はテレビで市川団十郎さんを見て感動して、すぐ歌舞伎を見に行ったんですけど、篠沢教授には会いに行くわけにもいかないな(笑)

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