美咲です!
先日「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」についての研修を受けました。
母が抗がん剤治療をしていた12年前に比べて、膵臓がんの薬物治療はずいぶん選択肢が広がっていました。
さらに、家族性膵がんの関連遺伝子も解明されてきているとのこと。
家族性膵がんの定義は
「親子または兄弟姉妹に2人以上の膵臓がん患者がいる家系の方に発症する膵臓がん」
だそうで、私は当てはまりませんが、
母の膵臓がん発覚が43歳と若いため、膵臓がんになりやすい遺伝子のことはかなり気になります。
このブログに来て下さった誰かの役に立てば・・・と思ったので、勉強したことをまとめておきますね♪
個人が研修で得た知識なので、間違っている部分や、勘違いしているところがあるかもしれません。必ず詳しい情報はご自身でお調べいただき確認してください。何かのきっかけになればと思い発信していますので、責任が負えませんので許してください。治療に関しては必ず主治医と相談してくださいね。
がんゲノム医療とは何ぞや
がんゲノム医療とはなんぞやってことなのですが、私なりにすごーく簡単に解釈すると
「手術で取ってきたがん組織や、患者さんの血液を使って、がん細胞の遺伝子情報を調べて、その人のがんに合わせた治療をする医療」
ということです。
お母さんはすい臓がんの治療で使っていた抗がん剤は「細胞障害性抗がん剤」といって、正常な細胞にも影響を及ぼす抗がん剤でした。そのためお母さんは髪が抜けたり(頭皮の細胞に作用するため)、味覚が変になったり(味を感じる細胞に作用するため)していました。
現在では「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」といった、がん細胞の特徴的な遺伝子異常にのみ、効果を発揮する抗がん剤が発明されてきました。
「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」はたくさん種類があるので、その中からどの抗がん剤が自分に合うのか、見つけ出す検査をして治療に取り入れていくのが「がんゲノム医療」なんですね♪
がんゲノム医療の中でも
・特定の抗がん剤(一種類)が、自分のがん治療に使えるか調べる検査を
「コンパニオン診断」
・1回の検査でがんに関連する多数(100以上の)遺伝子を同時に調べて使える抗がん剤があるかを調べる検査を
「がん遺伝子パネル検査」
と言います。
今回は広く遺伝子を検査して、複数の抗がん剤の中から自分に合う抗がん剤が見つかるかもしれない
「がん遺伝子パネル検査」に焦点を当てて説明していきます。
「がん遺伝子パネル検査」っていいことばっかりに聞こえるけど・・・
ここまで書くと、がん遺伝子パネル検査を行うことで
「自分(や家族)のがんを治す抗がん剤がみつかるんだ!」と思ってしまうのですが、
そういうわけでもないようです(;_:)
検査をしてもがんに役立つ情報が得られない、そして治療につながらない場合もあります。
- がんに関連する遺伝子に、変化が見つからない場合がある
- 遺伝子に変化が見つかっても、対応する治療薬がない場合がる
- 治療薬が見つかっても、投与基準に当てはまらないことがある(体力がない等)
- 治療薬が未承認薬や治験段階であったり、保険適用にならず非常に高額になる場合がある、治療を実施している施設がすごく遠方ということもあり得る
- 検査に使う検体(手術で取ってきた臓器や血液)が古かったり、量が足りなかったりして検査が中止になることがある
- 検査が結果が出るまで一カ月半から二カ月かかるので、その間に体調が変わってしまうことがある
- がんに関わる遺伝子の変化についてまだわかっていないことも多いため、遺伝子の変化が見つかっても有用な情報とならない場合がある
検査を受けるときには、検査をしても絶対に効果的な治療ができるわけではないということをきちんと理解しておく必要がありそうです。
それでも、がん遺伝子パネル検査を受けることで
- がん細胞に起きている遺伝子の変化が見つかる場合があり、
- さらにその遺伝子の変化によっては効果が期待できる治療が見つかって、治療に結び付く場合がある(約10~15%程度と考えられているそうです)
ということも事実です。
がん患者や家族としては
検査を受けることで治療に結び付く確率は10~15%であり、検査の限界もあることをしっかり理解して検査に臨むことが大切です。
治療法が見つかったときのこと(何をどこまで実施するか)と、治療が見つからなかったときのことを、どちらも想定しておくことが大切なのかなと思いました。
また、患者さんの臓器や血液を使う検査なので
- 遺伝性腫瘍に関連した結果(がんになりやすい遺伝子を持っているかどうか)がわかる
場合もあります。
がんになりやすい遺伝子を持っているかどうかわかることで、予防や治療ができる病気の場合には、定期的な検査などにより将来の発症や重症化を防ぐことができる場合があります。
しかし、将来かかるかもしれない病気について知ることは、それだけで心理的負担になることもあります。
がんになるかもしれない、と思いながらずっとこの先生きていくのは、辛いと感じる人もいると思います。
また、自分だけでなく家族に関係することですから、
結果を知りたいか、家族には伝えるのか、伝える場合は誰に伝えるのかなど、検査をする前に考えておく必要があると思います。
がん遺伝子パネル検査はどうやって受けるのか
がん遺伝子パネル検査の一部は保険診療になっています。
つまり、対象の方であれば医療費の3割負担で受けることができ、さらに高額療養費制度が使えるので、平均的な所得であれば、1ヵ月の医療費(自己負担額)の上限である約9万円程度で検査を受けることが可能です(病院ごとに検査費用以外に、初回診察料や面談費用など加算される場合があります)
2021年時点でがんゲノム医療連携病院は約180か所あり、病院同士が連携して、全国どこにいてもがんゲノム医療が受けられるよう、順次体制を整えているそうです。
おかあさんのときにこの検査があったらなぁ(;_:)
がん遺伝子パネル検査の対象は?
保険診療でがん遺伝子パネル検査が受けられる人は
- ・標準治療がない(原発不明がんや希少がん)固形がん患者
- ・再発や進行が認められ、標準治療が終了(見込みを含む)した固形がん患者
のどちらかであり、かつ
- 全身状態や臓器機能などから、がん遺伝子パネル検査を実施した後にがん薬物療法の適応になる可能性が高いと主治医が判断した患者
となります。
つまり、治療に難渋していたり、治療が終盤を迎えている患者さんであり、検査後(約2か月後)であっても、外来通院で化学療法を受けられる程度の体力がある患者さんということですね。
治療の初めから検査を受けたいし、なんなら私は健康なうちから検査しておきたいけど、保険診療ではそれは難しいんですね。
まとめ
これまで説明してきたことをまとめると以下のようになります。
①がんゲノム医療とは「手術で取ってきたがん組織や、患者さんの血液を使って、がん細胞の遺伝子情報を調べて、その人のがんに合わせた治療をする医療」のこと。その人のがんと使いたい薬がマッチするか調べる検査を「コンパニオン検査」その人のがんの遺伝子を全体的に調べて使える薬がないか探す検査を「がん遺伝子パネル検査」という。
②がん遺伝子パネル検査を行っても、実際に治療が見つかって、治療を開始できる人は1割程度。高額な自費治療であったり安全性が確立されていない治験である可能性もあり、見つかった場合どこまで治療するか、見つからなかった場合どうするかをきちんと考えておく必要がある。遺伝性腫瘍が見つかる可能性もあり、その場合家族にどこまで話すかも考えておく必要がある。
③がん遺伝子パネル検査は、治療に難渋していたり治療が終盤を迎えている患者さんであり、かつ、検査後(約2か月)であっても、外来通院で化学療法を受けられる程度の体力がある患者さんなら保険診療で受けることができる。がん遺伝子パネル検査が受けられる病院は全国にあり、今後も広がる可能性あり。
私は母の膵臓がんが遺伝性であるのなら早く知りたいし、家族にも予防してほしいと思っているので、がん遺伝子パネル検査の技術が進んで、希望する人が広く受けられる社会になってほしいなぁと思っています。
一方で「知らされない権利」も人にはあると思うので、医療者としてそれぞれの患者さんの思いに沿ったサポートができる看護師でありたいと思いました。
ここまで見てくださってありがとうございました。このサイトに来て下さった方の、何かに役に立てば幸いです。
美咲でした~(*’▽’)
参考
中外製薬 おしえてがんゲノム医療 https://gan-genome.jp/
国立がん研究センターがん情報サービス がんゲノム医療とがん遺伝子検査 https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/index.html